もしもダンガンロンパだったら(第7話


始まるんだ・・・。

命がけの裁判・・・。

命がけの騙しあい・・・

命がけの裏切り・・・

命がけの謎解き・・・

命がけの言い訳・・

命がけの信頼・・・




命がけの学級裁判!!





全員が裁判場にあるような証言台の前に立ち、準備が出来たことを示す。
全員の準備が終わったことをモノクマが確認すると学級裁判についての簡単な説明を始めた。

モノクマ
「まずは学級裁判の簡単な説明から始めましょう!!
学級裁判の結果は、オマエラの投票により決定されます。
正しいクロを指摘できればクロだけがおしおき!!
だけど・・・もし、間違っていたらクロ以外の全員がおしおきされ
皆を欺いたクロだけが晴れて卒業となりまーす!!」

ルイ
「本当に・・・この中に犯人がいるのでしょうか・・・。」

ルイが居てほしくない事を願う。
だが、その言葉を聞いたギーンがルイを鼻で笑った。

ギーン
「まだ犯人がいないと信じているのか。」
モノクマ
「この中に、必ず犯人がいます!なぜなら、僕はその犯行を監視カメラで一部始終みていたからね。うぷぷぷぷ。」
琶月
「カ、カメラで・・・一部始終見ていた癖に・・・止めもしなかったって言うんですか・・!!?」

私は怒りをモノクマにぶつける。

ギーン
「醜い争いは後にしろ。今は犯人捜しを楽しむべきではないのか?さもなければ、俺達全員の死が待っているからな。」
琶月
「・・・・・・・。」

・・・・・・。

渋々、私は引き下がった。
・・・そうだ・・・ここで犯人を見つけることが出来なければ・・・黒以外の全員が・・・死んでしまうんだ・・・。
・・・もう一度・・・見つけた有力そうな証拠を振り返ってみよう。



[言魂:ザ・モノクマファイル1]
 ->事件状況について詳しく書かれている。


[言魂:ファンの手帳]
 ->私の身体状況について細かく書かれている。
 ->事件当時、私の服は血でぐっしょりと濡れていたらしい。
 ->手は綺麗だったらしい。


[言魂:壁についた無数の傷跡]
 ->何か斬撃が掠ったかのような跡がたくさん残っている。


[言魂:防音の施された部屋]
 ->私の部屋に限らず、全員の部屋は防音が施されているらしい。


[言魂:黄金の模擬刀]
 ->師匠と一緒に持ち帰った模擬刀。素手とかで触ると簡単に金箔が剥がれる。水で流しても中々洗い流せない曲者。


[言魂:輝月の指についた金箔]
 ->指に金色のキラキラしたものがついていた。恐らく金箔。


[言魂:輝月の右肩についた金箔]


[言魂:断水]

 ->22:00から07:00までの夜時間の間は断水されていて一切の水が出ない。


[言魂:ドアに出来た小さな窪み]
 ->窪みにキラキラ光る物がついている。


[言魂:輝月に渡されたDVD]
 ->割れていて中身を見ることは出来ない。


[言魂:ファンの証言]
 ->まだ誰のゴミを処分したことがないため、全てのゴミが残っていると証言した。



[言魂:ボロとガムナの証言]
 ->ガムナとボロは昨日1時までボードゲームを行い、その後自分の部屋で寝たらしい。
 ->ヴィックスも参加していたらしいが動機が収録されているDVDで神経がすり減り疲れてしまったのか10時で眠ってしまったらしい。


・・・。

あとは・・うまくいくことを祈ろう・・・。
しばらくすると、もう一度ルイが口を開いた。

ルイ
「しかし、私達は捜査のプロではありません・・・。まず、どこから推測していけばよろしいのか・・・。」
ファン
「では、まずみなさんで目を瞑ってください。その後犯人は挙手してください。」
ヘル
「する訳ねーだろ・・・。」
ファン
「罪の重圧に押しつぶされて懺悔するかもしれませんよ。」
ジェスター
「懺悔も推測もする必要ないよ!だって犯人は琶月だから!!」

ジェスターが一際大きな声で叫び、背伸びしながら私を指差した。

ヴィックス
「あぁ、俺もその意見には賛成だな・・・。大方、琶月が輝月を部屋に呼び出して油断した所を刀でブスリとやったんだろうな・・・。」
キュー
「そう・・なんだよね・・・?」
琶月
「ち、違いますって!!!」
ディバン
「待て。」

ディバンもジェスターに負けじと声を張る。

ディバン
「何の根拠もなしにもう議論を終わらせるつもりか?間違えたら犯人以外の全員が処刑されてお陀仏になるんだぞ。もう少し慎重に話し合ってからでも遅くはないんじゃないのか?」
テルミット
「それもそうです。・・・確かに、琶月さんが犯人である可能性は濃厚ですけど、とりあえず話し合ってみる価値はあると思います・・・。」

だ、だから私は犯人じゃないんだって・・・っと色々突っ込みを入れたいけれど、入れる瞬間がない。

ルイ
「それでは・・・何から・・話し合いましょうか?」
モノクマ
「今回は初回だから、最初だけ手伝ってあげるよ。こういうのは、まず凶器は何かって所から考えていくと推理ってのはスム~ズに進んでいくんだよ。二度は言わないからよく覚えておいてね。」
ジェスター
「じゃぁーとりあえず凶器について話そうよ。」

琶月
「(・・・いよいよ・・始まる・・!・・・この中に・・・師匠を殺した犯人がいる・・・!!)」

見つける。

絶対に見つけてみせる。

この学級裁判で、犯人を絶対に見つけてみせる!!


聞き逃すことは出来ない。全神経を話に集中させて、これまで捜査した内容と照らし合わせていこう・・・!!



--議題:凶器について--


ヘル
「凶器なら一目瞭然だ。・・・輝月の胸に突き刺さったあの黄金の刀で間違いない。」

黄金の刀・・?あの模擬刀の事を言っているのだろう・・・。
確かに師匠はあの模擬刀で心臓を一突きされているし、仮にそれが模擬刀であれ刀であれ心臓を貫かれているという事実に変わりはない・・・。
言い回しの違いだけでヘルの言葉に矛盾はない。勿論その認識の違いが問題になるようであればその時に指摘してあげよう。今は指摘した所で状況は変わらない。

ファン
「心臓を刀で一突き・・・。残念ですが即死だったと思われます。」

即死だったかどうかは流石に分らないと思うが
少なくとも致命傷であることは事実だ。反論しても仕方がないし反論する材料もない。

キュー
「心臓を刀で一突き・・・なんて・・。酷すぎるよ・・・・。」
琶月
「本当に・・・酷過ぎます・・・師匠・・・。」
ルイ
「きっと輝月さんは・・・。
何も抵抗できずに殺されてしまったのでしょうか・・・。」


・・・何も抵抗できずに?・・・だとしたらあの傷は一体なんだったと言うのだ?
私は半ば反射的にルイに反論を繰り出した。

琶月
「そ、それは違います。あの壁の傷は・・・どう見ても争った跡だと思います。」

 [言魂:壁についた無数の傷跡]
 ->何か斬撃が掠ったかのような跡がたくさん残っている。

琶月
「もし、何も抵抗できずに殺されていたのであれば、あんなたくさんの壁の傷がついている説明がつきません。」
ルイ
「た、確かに・・・。・・・すいません・・・。」
琶月
「あ、いえ・・。」

素直に謝られるとこっちも謝ってしまいそうになる・・・。

ジェスター
「無抵抗な輝月を殺した後、あたかもそこで激しい戦闘があったかのように見せかけるために細工をしたって考えは?」
ギーン
「何故そんな事をしなければならない?無抵抗な殺害だと仮定した場合、そのような細工を行った所で犯人はどのようなメリットを得るか答えてもらおう。」
ジェスター
「そんなの私に分る訳ないじゃん!!」

ボロ
「そこで逆切れっすか!?」


・・・結局、ルイの言葉の間違いを直しただけで、根本的な部分の進展を感じられない・・・。
こんな議論で大丈夫なのだろうか・・・。私はキュピルの方へ顔を向けた。
キュピルはただ無言で頷き、それでよかった事を私に伝える。

ヴィックス
「・・・今更・・・凶器の話やら・・争った跡やら・・言いあっても仕方がないだろ!」

ヴィックスがやや大きな声で周りに語りかけ、ヴィックス以外の全員が口を閉じた。

ヴィックス
「結局の所は・・・琶月、お前が犯人なんだろ!?」

琶月
「ち、違います・・・!!私が師匠を殺すはずなんかないじゃないですか!!」
ボロ
「いーや、そうやって裏切ってきた奴を俺は何度も戦場で見てきたぜ。」
ヘル
「第一犯人は皆そう言うだろうな。俺じゃないっと。」

ど、どうして・・・どうして皆私を疑っているの・・・・!
私は犯人なんかじゃない・・・!このまま間違った議論に進んだら・・・皆処刑されるというのに・・・!
初っ端から絶望的状況だ。初めての学級裁判なのにいきなりこんな不利な状態から始まるなんて・・・。
キュピルには自分を信じて矛盾を指摘しろって言っていたけど・・・。やっぱり私なんかじゃ出来ない!!

キュピル
「少し待ってくれないか?琶月が犯人だとすぐに決めつけるのはいくらなんでも時期早々だ。それなりの理由を言ってもらおうか。

私が困っている所を見てキュピルが見かねたのか、キュピルが腕を組みながらヴィックスに言い返す。・・・助け舟だ。
ヴィックスも負けじと腕を組みキュピルに言い返した。

ヴィックス
「ああ、あるぜ。それなりの理由、それも動かぬ証拠っていうやつのな!琶月!あの黄金の刀、お前の所持品だろ!?
琶月
「う、うぅっ・・!!!」

無意識的にうめき声をあげてしまった。
確かにあれは私のだ・・・。

ボロ
「俺も確かにみたっすよ。初日だったか二日目ぐらいに、輝月と琶月が二人並んで、その琶月が黄金の刀を持ち帰っている所を。
ガムナ
「悪いけど俺も見ちまったからなぁ。白状するなら今のうちだぜ?」

かつで人とすれ違った事でここまで後悔するような事は今まであっただろうか?
あの時まさかこんな結果になるなんて微塵にも思っていなかった!!
着々と・・私があたかも犯人であるかのような・・・そんな展開になりつつある!

ディバン
「どうなんだ、琶月。」
ジェスター
「嘘は言わない方が身のためだよ。」

皆の私に向ける視線が痛い・・・。
でも、嘘は・・・言った所で心象が悪くなるだけだし何も状況は好転しない・・・。隠しようのない事実だから素直に言うしかない・・・。

琶月
「そ、そうですけど・・・・。で、でも!!私はあれで師匠を刺したりなんかしていません!!」
ルイ
「でも、ずっと部屋とかに置いていらっしゃってたんですよね?もし、琶月さんが犯人でないとすれば、犯人はどこでその黄金の刀を手にするタイミングがあったのですか?
キュー
「・・・怪しいね。」
ジェスター
「はい決定。琶月が黒。終わり。」
琶月
「ち、違います!!私じゃありません!!!!!」


わ、私じゃないのに・・!!!私じゃないのに!!!!!!
このままだと・・・皆処刑されて終わるのに!!

キュピル
「だから待て。」


キュピルが周りを一喝する。

キュピル
「・・・しょうがないな、始めからこんな事は言いたくないんだが・・・。先に結論から言う。俺は琶月が黒ではないと考えている。
ヴィックス
「は?何でだ?」
キュピル
「まず、琶月があの黄金の刀を使って本当に輝月を刺したのであれば、説明がつかなくなる証拠がいくつかある。
まずは凶器の点から行こう。琶月、あの黄金の刀。そのまま触るとどうなるか、覚えているか?」
琶月
「え!?」

突然話題を振られ私は一瞬動揺してしまったが、よく知っている事なのですぐに答えを返した。

琶月
「・・えーっと・・・。あの黄金の刀を素手で触ると・・・手や指に金箔がくっついて剥がすのが大変なことになります。

 [言魂:黄金の模擬刀]
 ->師匠と一緒に持ち帰った模擬刀。素手とかで触ると簡単に金箔が剥がれる。水で流しても中々剥がれない曲者。

ギーン
「ふん、なるほどな。」
テルミット
「その、どういうことなのですか?」
キュピル
「いいか?もし琶月が犯人ならあの模擬刀を握った事になる。そうなれば琶月の手には金箔がこびりついていなければいけない。
だが、俺達が現場にかけつけてきた時琶月の手はどうなっていたか覚えているか?」
ボロ
「流石に手の事なんか覚えていないっす。」
琶月
「私の手がどうなっていたか。それを証明する証拠品があります。」

私がそういうと全員の視線が私に集まった。
そして私は懐からファンの手帳を取り出し皆に見せつけた。

 [言魂:ファンの手帳]
 ->私の身体状況について細かく書かれている。
 ->事件当時、私の服は血でぐっしょりと濡れていたらしい。
 ->手は綺麗だったらしい。

琶月
「これはファンさんが当時の状況をメモしてくれた物です。この手帳によると、私の手は綺麗だったと確かに書かれています。」

私は手帳を皆に回し、中身を見せ始めた。
最後に手帳が私の元へ戻ると、もう一度手帳を回して貰って手帳をファンの元へ返した。

ヘル
「おい、でたらめかいているんじゃないんだろうな?」
ファン
「では、それがデタラメである事を示す何かを提出してください。」

ファンの鋭い反論に、それ以上ヘルは何かを言う事はなかった。

キュピル
「いいか?琶月の手は綺麗なままで金箔なんかついていなかった。」
ルイ
「見間違い・・・とかの可能性はないのですよね?」

ファンがすぐにルイへ向けて反論した。

ファン
「すぐに犯人捜しが始まるだろうと思って琶月さんや輝月さん含む身体情報を全て記録してあります。」
ガムナ
「おほ・・・身体情報・・・なんかエロいな。」
キュー
「真面目にやって!!」
ガムナ
「へぇへぇっと・・・。」
ヘル
「輝月の身体情報については何も書かれていなかったようだが。」
ファン
「あ、そうでしたね。モノクマファイルのせいで出番がなくなったので自分で破り捨てたのでした。」
ヘル
「んだよ・・・。紛らわしい・・・。
だが、何にしてもそれだけじゃ琶月が黒じゃないとは言えねぇんじゃねーのか?手を洗ったのかもしれねぇぞ。
琶月
「それはあり得ません!!」

ヘル
「んでだよ!」

即座に私が反論し返したため、ヘルが怒りを露わにする。

琶月
「何故、手を洗えなかったのか。それは夜時間は水が出ないからです!

 [言魂:断水]
 ->22:00から07:00までの夜時間の間は断水されていて一切の水が出ない。

琶月
「夜10時から朝7時までの時間帯は理由は分りませんが断水していて一切の水が出ません!」
キュピル
「輝月の死亡時刻は推定1時40分。そして俺達が現場に駆け付けた時刻は6時から6時半。水の出ない時間帯による犯行だ。
琶月は手を洗い流すことは出来なかったはずだ。」
ボロ
「トイレに貯まった水で手を洗ったのかもしれないっすよ。」

キュピル
「・・・え?」

ボロの意外な反論にキュピルが面を食らったような表情を見せた。

ジェスター
「きーーたーーなーーいーー!!琶月は金輪際私に1m以上近づかないでね。ところでヘルも臭いんだけど。」
ヘル
「ん、もう三日もシャワー浴びてないからな。」
キュー
「うわっ、汚い!!」
ジェスター
「くーーーーーーーさーーーーーーいーーーーー!!ヘルも金輪際私に5m以上近づかないで!」
ガムナ
「子供のいじめか!?だけど、トイレに貯まった水なら確かに手が洗えるぜ。」
キュピル
「・・・その発想はなかったな・・・・。」

キュピルが素直に認めてしまい、思わず私は慌てた。

琶月
「ふぇ!!?キュ、キュピルさん!!認めないでください!!!」
キュピル
「いや、事実は事実だ。認めなければいけない。」
琶月
「う、うううぅぅぅぅ・・・・・・。」

あと少しで私の容疑が晴れる・・・そんな気がしたのに・・・。

ヴィックス
「結局琶月が黒か・・・。始まる前から分ってはいたけどな・・・。」

ヴィックスがそう言うと、すかさずキュピルはもう一度反論を繰り出した。

キュピル
「いや、琶月が黒でない理由は他にもある。」
ディバン
「他にもあると言うのか・・!」

ディバンが素直に驚いたような表情を見せる。

キュピル
「琶月、お前が起きた時血まみれになっていたな。」
琶月
「そ、そうですけど・・・。」
テルミット
「それはファンさんの手帳にも書かれていましたね。」 

 [言魂:ファンの手帳]
 ->私の身体状況について細かく書かれている。
 ->事件当時、私の服は血でぐっしょりと濡れていたらしい。
 ->手は綺麗だったらしい。

ヴィックス
「琶月が血まみれになっていた理由は簡単だ!それは輝月をあの黄金の刀で殺したから血まみれになっていたんだろ!?」
琶月
「ち、違います!!起きたら、起きたら何故か血まみれになっていたんです!これは冤罪です!」
ギーン
「根拠のない主張は止めた方が身のためだ。」
ジェスター
「うんうん。証拠は?誰かに血をかけられたのを見たの?」
琶月
「うっ・・・み、見た訳では・・・ないんですけど・・・。」
ジェスター
「やっぱり琶月が犯人だよ!私がそう言うんだから間違いないよ!」
琶月
「だ、だからちがいま・・!!」
ギーン
「貴様もだ、ジェスター。もう少し論理的な話は出来んのか。」
キュピル
「ギーンの言う通りだ。論理的に考えて琶月が起きた時、服が血まみれになっていたっていうのは少しおかしな状況だと思わないのか?琶月、お前は夢遊病か何かの症状を患っている訳ではないんだろう?」
琶月
「あ、当たり前です!」
ジェスター
「夢遊病って何?」
ファン
「夢遊病とは寝ている時に突然起き上がって歩き出したり寝言を言いだす症状の事を言います。目覚めた時、その行動に対する自己認識を持たないので実際に夢遊病を発症したことがある方は意識が戻ったとき今の状況にびっくりしたりすることがあります。」
ジェスター
「ふーん。」
ディバン
「夢遊病は置いておくぞ。琶月が血まみれである事に、どの辺がおかしな状況だと思ったんだ?人を刀で突き刺せば服に血が付くのは当たり前だと思うが。」
キュピル
「人を刺せば服に血がつく・・・。その事については反論はない。」

ギーンがキュピルの意見に乗りかかる。

ギーン
「キュピルが言いたいのは、琶月の服に付着していた血の量の事について言っている。」
ディバン
「・・・血の量?」
キュピル
「ああ。・・・だが、この話をする前に輝月がどうやって死んだのかについてもう一度話し合っておきたい。俺の考えが本当に合っているかどうか知るために・・・な。」


--議題:輝月の死に方について--


ヘル
「輝月の死に方だ?致命傷の事か?それならだれが見たって明らかだ。輝月は心臓を貫かれて死んだ!」

それは紛れもない事実だろう。
師匠は心臓を黄金の刀で貫かれ・・・そして命を落とした・・・。

キュー
「うん・・・私も輝月の致命傷はあの心臓を一刺ししたあの刀で間違いないと思うなぁ。」

心臓を一刺しした事については間違いないだろう。
モノクマファイルにも、刺し傷は一つしかなかったって書かれてある。

ヴィックス
「今更こんな話をした所で何になるって言うんだ・・・。」
キュピル
「俺が知りたいのは、輝月は何で死んだかについて知りたいのではない。輝月はあの黄金刀でどうやって殺されたのかを知りたい。」
ジェスター
「そんなの簡単な話だよ!
あの琶月が、黄金刀を握って輝月を目の前から突き刺したんだよ!!
その後刀を引き抜いて、その時に血が琶月の服に飛び散ったんだよ!」
琶月
「・・・!」

模擬刀は死体に刺さったままだ!引き抜かれてなんかいない!

琶月
「それは違います!模擬刀は・・師匠に刺さったままで、引き抜かれてなんかいません!」


ジェスター
「もう一回刺したのかもしれないよ?」
琶月
「刺し傷は一つしかないとモノクマファイルに書かれています!」

ザ・モノクマファイル 

『被害者は輝月。死亡時刻は午前1時40分頃。
死体発見場となったのは寄宿舎エリアにある琶月の個室。
被害者はその一室の角で死亡していた。
致命傷は心臓への刺し傷。
その他、右肩に打撃痕あり。打撃痕がついたと同時に骨にヒビが入った模様。』

キュピル
「もう一回刺したなら刺し傷は二つになっていなければおかしい。」
ジェスター
「同じ傷跡をもう一度刺したのかもしれないよ?そうすれば1か所しか傷がないように見えるじゃん。」
ガムナ
「あああ、めんどくせぇ!!どっちの意味にも取れる!!どっちが正しいんだ!?」
モノクマ
「もぉ、めんどくさいのはこっちのセリフだよぉ!君たち、ちゃんと勉強してるの?刺し傷は一つ!引き抜いてもう一度刺したなら二つ!
寸分の狂いなく同じ場所を刺せる人は刀剣使いの輝月ぐらいだけだよ!あ、その輝月はもう死んじゃったんだけどね。」
ディバン
「・・・耳を傾けるな、琶月。」
琶月
「・・・・・・・・。」

私はモノクマをただ睨みつける。

キュピル
「・・・状況をまとめるとこうだ。刀は輝月の前方から突き刺さっていた。その状況からしてジェスターの言った通り
犯人は輝月の目の前から突き刺したっという点は正しいだろう。」
ジェスター
「ね?私正しかったでしょ?」
ボロ
「半分間違ってたっすけどね・・・。」
キュピル
「ポイントはここだ。前方から突き刺した刀は刺さったまま。普通、刀を突き刺しただけでは刀そのものが蓋の役割を果たし血飛沫こそ飛んでも
服に血がベッタリつくような事は起きらない。あの量は明らかに不自然だ。」
ファン
「科学的に見て、琶月さんの血の濡れ方はまるで誰かにコップでかけられたかのように血が広がっていましたね。血飛沫の跡としては不自然です。」
ギーン
「血の付いたコップが見つかった訳ではないが・・・大方両手で掬ってかけたんだろう。物的証拠の残らない手の方がやり方は原始的でも合理的だ。」
ジェスター
「手で掬って血をかけたら手に血がついちゃってダメだと思うんだけど?夜時間は水が出ないんでしょ?」
ガムナ
「トイレに貯まった水で洗ったんだぜ、きっと。」
ジェスター
「きーーーーーたーーーーーなーーーーいーーーー!犯人も私の傍に近寄らないでよ?」

ルイが一度大きく咳払いして話の流れを変える。

ルイ
「そ、それじゃぁ・・・琶月さんは犯人ではないんですか・・?」

ルイが若干の動揺を見せながら周りに語りかける。
もし琶月が犯人であればこの学級裁判はスムーズに終わったはずだが議論は思わぬ方向へと進み始めている。
琶月が犯人でないとすれば、容疑者のスコープが一気に広がってしまうため自分も疑われるのではとオドオドし始める人から
犯人が見つからない事に苛立ちを見せる人も出始めた。

ヘル
「ちくしょう、琶月が犯人じゃないってなら誰が犯人だ!このまま迷宮入りはごめんだぞ!」
ディバン
「琶月が犯人じゃないという判断はまだ早いと思うぞ。確かに血がべったりとつくのは不自然な状況かもしれない。だが琶月はドジな奴だ。刺した拍子に抱き着いてしまってべったりついてしまっただけだとしたらどうする?」
テルミット
「刀を前からさしておいて間違って抱き着くような事はまず起きないと思いますが・・・・。」
ファン
「科学的に見て琶月さんが輝月さんの事を恋していたのは確定していますので、もしかしたら生きている間にはしてくれなかったであろう抱き着きをしたのかもしれません。」
琶月
「し、死んだ人に向かって抱き着きなんかしません!!・・・師匠ならしてもいいですけど・・・。
ジェスター
「あ、今の自首?」
ヴィックス
「どっから突っ込めばいいのやら・・・。」

ディバン
「抱き着いていなかったにしろ何にしろ、何かの拍子でべったりつく事はあるかもしれない。
俺が言いたいのはこれだけの証拠では琶月は黒ではないと断言したくない。」
ヴィックス
「その点については俺も同意見だ。」
ボロ
「俺もっす。」
ガムナ
「ミートゥー。」
琶月
「ぐ・・ぐぐ・・・。」

あと・・・あともう1個・・・何か私が容疑でない事を証明できれば周りの意見も変えてくれそうなのだけど・・・。
考えろ・・・・。考えるんだ私・・・!!
皆はあの刀を使って前から師匠を突き刺してって考えていて・・・。それで・・・・。
あ、そうだった刀じゃなくて模擬刀で・・・いや、そんな些細な事はどうだって・・・。
・・・・ん?・・・模擬刀・・・。刀・・・・。

琶月
「も・・・もしかして・・・!!」

そうだ、さっきは模擬刀か刀か、その言い方の違いは些細な物だったが
ある証拠と突き合わせれば、その違いは大きなものになってくるかもしれない・・・!!

キュピル
「そうか・・・。・・・琶月もちょうど同じことを思いついたかもしれないな。聞いてくれ、琶月が黒ではないという理由は他にもある。」
ヴィックス
「何だって・・・?」
キュピル
「まず、改めて皆に聞くが凶器は何だったと思う?
ヘル
「何回言わせるつもりだ!黄金の刀っつってるだろ!」
キュピル
「違う。・・・琶月、正確に言ってやれ。」
琶月
黄金の模擬です。」
ヘル
模擬・・・刀・・・だと?」
ルイ
「も、模擬刀って・・・偽物の刀って事ですよね?実際に斬れる訳ではなく・・・。模擬刀でも人を殺せるのですか!?」
ファン
「確かに模擬刀には刃がなく人を斬る事は出来ませんが、先端は鋭くなっているので人を突き刺そうと思えば本物の刀と同じく突き刺すことは出来るはずです。凶器として成立します。深く刺す事は出来ないかもしれませんけどね。」
ギーン
「人を殺すには十分だ。現に輝月は死んだ。」
琶月
「凶器は刀ではなく模擬刀だった。つまり人を斬って殺すことは出来ません。だけど、そうなるとあの現場でおかしな点がいくつか出来上ってしまいます・・・!」
ボロ
「お、お、おかしな点っすか!?それは一体!?」
キュピル
「今回、輝月には外傷が二つあったはずだ。一つは刺し傷。もう一つ、答えてみろ。」
琶月
肩にある殴打された跡・・・ですよね?」
キュピル
「その証拠は?」
琶月
右肩に打撃痕あり。打撃痕がついたと同時に骨にヒビが入った模様。とモノクマファイルに書かれています。」
キュピル
「そうだ。犯人は輝月を殺すために肩から斬って倒そうとした。これが犯人が琶月ではない更なる理由だ。」
ギーン
「・・・なるほどな。一理ある。」

ギーンが納得した様子を見たヘルが慌てながら叫んだ。

ヘル
「お、おい!何言っているのか俺には全然わからねぇぞ!俺にもわかるように言え!!」
キュー
「ギーンに分って私には分らないのが凄く癪に障るけど・・・。どういう事なの?」
キュピル
「いいか、もし琶月が犯人であればわざわざ肩を叩くような事はしない。なぜなら、肩を強打しても人は殺せない。第一、リスクの高すぎる技だと思わないか?」
琶月
「・・・そうなんです。刀を大きく振りかざして攻撃する技は隙が大きく、何よりも模擬刀であれば簡単に受け止める事だってできます。そうなれば武器を奪われてしまう可能性だってあるんです!・・・って師匠が言っていました。」
キュー
「最後の一言がなかったら琶月の事本気で尊敬してたのに・・・。」
琶月
「あああああああああああ・・・って、今は叫んでいる場合じゃなかった!」
ジェスター
「シャウトキャンセル~?」
ガムナ
「戦闘のプロである俺からついでに付け足すとすれば、わざわざ模擬刀で唯一殺傷力のある突きを行わずに斬りを行うのは馬鹿がすることだぜ。」
ボロ
「はぁ?お前が戦闘のプロ?俺の方が戦闘のプロっすよ!」
ヴィックス
「いいや俺だ!!俺はお前らの隊長だぞ!?」
キュー
「死ね。そんでもう一回生き返って死ね!」
ヴィックス
「ひ、ひでぇっ!!?」

キューと3馬鹿の漫才を無視してキュピルが話を続ける。

キュピル
「犯人は振りおろした刀が輝月の肩に当たったとき、それが初めて模擬刀である事に気が付いたんだろう。
だが肩に当たったのであれば輝月もよろめいたりしたのだろう。そして二回目の攻撃は付きを繰り出し輝月の心臓をその模擬刀で貫いた。
壁にあった無数の傷痕が犯人が模擬刀である事に気が付いていなかった事も後押しになるだろう。突きを繰り返していればあんなにも傷跡が残らないだろうからな。」
ヴィックス
「なぁ、さっきからあたかも犯人はその黄金の刀が模擬刀である事に気が付いていなかったかのように説明を続けているが、その証拠はあるのか?
もしかしたらその打撃痕は犯人との格闘以外で出来た痕かもしれないんだぞ・・・。」
ギーン
「それはあり得ん。」
ヴィックス
「な、なんでだよ。」
ギーン
「おい、琶月。お前が俺の代わりに答えてやれ。」
琶月
「わ、私!?・・・えっと・・・。右肩についていた金箔がその証明になると思います。

 [言魂:輝月の右肩についた金箔]

琶月
「師匠の右肩には金色に光り輝く何かが付着していました。」
ディバン
「あぁ、確かにあった。・・・そうか、あの時は何故そんなものが付着しているのかあまり意識していなかったが模擬刀で叩かれた事によってついたのか。」
テルミット
「模擬刀の金箔は剥がれやすいそうですからね・・・。」
キュピル
「どうだ?納得したか?」
ヴィックス
「あぁ、ちゃんと合っているならいいんだ。間違った方向に議論は進めたくなかったからな・・・。」

キュピルが数回咳払いをし、話の続きを始めた。

キュピル
「模擬刀で斬撃を行う価値がない事は理解してもらえたところで、ここからが重要だ。
・・・それが模擬刀である事を知っている琶月が、態々それを振り回すような事はするか?
テルミット
「あ・・・そ、そういうことですか・・・。」
キュピル
「もし、琶月が犯人であれば最初から隙も少なく殺傷力の高い突きだけを繰り出すはずだ。これが琶月が犯人でない最後の理由だ。」
ディバン
「手についていない金箔。不自然に広がった血の跡。そして模擬刀の事実。三つの理由もそろえば信憑性は高いな。ここで琶月を犯人だと決めるのは逆にリスクが高くなってくる。」
キュピル
「まぁ、加えて言えばもし琶月が犯人なら普通呑気にその場で叫んだりしないだろうな。
いいか?犯人は琶月じゃない!

琶月
「キュ、キュピル・・・さん・・・。」

・・・・最後皮肉を言われた気がするけど、今はただ感謝の気持ちでいっぱいだった。
始めと比べて回りからの視線は幾分かマシな物となった。

キュー
「で、でもさ・・・。犯人が琶月じゃないとなると・・・一体誰が犯人なの!!?」
ヴィックス
「やべぇな・・・。まさか手詰まりじゃねーだろうな・・・。」
ファン
「モノクマさん。もし議論が手詰まりとなり、そこで議論が終わってしまった場合はどうなるのですか?」
モノクマ
「そこで投票タイムの時間だよ。皆には当てずっぽうで答えてもらう事になるね。自分の運を信じてもう投票する?」
テルミット
「ぎ、議論を続けましょう!何方でも構いません、些細な事でも何か気になっている人はいらっしゃいませんか!?」



--議題:気になったこと--


ルイ
「何方か・・・少しでも気になっている事があれば仰ってください。
きっとキュピルさんが解明してくれます・・・!!そうですよね?」
キュピル
「・・・・・・・。」
ジェスター
「うーん・・・犯人はどうやって琶月の部屋にある模擬刀を手に入れたんだろうなぁ・・・。

・・・確かに。それは気になるが現時点でそれを知りえる手段はないが・・・。
私の部屋にあった模擬刀を犯人はどうやって手にしたのか?
少なくとも、模擬刀が師匠の胸に突き刺さっていた以上、必ずその模擬刀を何らかの方法で入手しているはずだ。
でも気を失い直前まで模擬刀は確かに私の部屋にあったはずだ・・・。その時間帯に何か起きた・・・?

ディバン
「犯人は、一体どうやって輝月を殺した?超高校級の刀剣使いだけあって輝月の反射神経や戦闘能力は恐ろしい程に高かったはずだ。」

それは私もずっと思っていたところだ。どうやって犯人は戦闘能力の高い師匠を殺すことが出来たのか?
少なくとも、戦闘経験の少ない人には無理な犯行だったか、それとも不意打ちでも突いたのか・・・。
現時点でそれを解明する手段は見当たらない・・・。

ボロ
「な、なぁ・・。俺ふと思ったんだけど輝月の肩にある打撃跡って犯人が肩を斬ろうとしたんじゃなくて・・・
偶然頭を狙おうとして肩に当たっとか・・だったりしないっすね?」
キュピル
「仮にそうだとしても肩から斬ろうとしたという行動から、頭から斬って倒そうとしたという事に変わるだけだ。結論に変わりはない。

キュピルの言った通りだ。
肩を狙おうとしたのではなく、仮に頭を狙っていたとしても推論の内容に変化はない。

テルミット
「他に気になる方は!?」
琶月
「・・・・・・。」
ヘル
「つーかよ・・!もっと気になる事があるだろう!!
何故琶月の部屋に輝月の死体があったんだ!!
それはやっぱり琶月が犯人だからじゃねーのか!?
琶月
「・・・!それは違います!!」


ヘル
「何が違うんだよ。」
琶月
「私が犯人じゃない事です!」
ギーン
「期待して損したぞ。超高校級の貧乳。」
ジェスター
「今確かに琶月の心証が下がった音が聞こえたね。」
琶月
「うっ・・・」
ヘル
「へっ、言っておくけどな。輝月の死体がお前の部屋にある理由を説明出来ない間は
俺はお前を犯人だと思っているからな!」

琶月
「それは違う!」


もう一度私は腹の底から叫んだ。

ギーン
「今度は何が違う?」
琶月
「私が犯人でない事です。でも今度は根拠もあります!!師匠の死体が私の部屋にある理由を証明できるかもしれません!」
キュピル
「何だって?」
ギーン
「言ってみろ。」
琶月
「あれは脅迫ビデオを見た後のことでした。疲れた私は、部屋に戻って昼寝をしていたんですけど、その2~3時間後ぐらいの11時に、インターホンが鳴ったんです。」
ジェスター
「開けたら輝月だったって事?」
琶月
「はい。その時ちゃんと時刻を確認したので間違いありません。」
ヘル
「おい、琶月。てめぇ嘘ついてんじゃねぇぞ!!」

琶月
「うぇ!!?う、嘘なんかついていませんよ!!!事実だけを言っています!!」

ディバン
「琶月。お前は知らないかもしれないが、11時頃、輝月とヘルは食堂で大喧嘩していたんだ。
琶月
「・・・えっ!!?そんなの初めて知りました!」
ヴィックス
「琶月、お前嘘ついてんのか?」
ジェスター
「あーー!もしかして本当は琶月が犯人でそれを隠すために嘘ついたんだね?」
キュピル
「・・・いいや、こんな所で嘘をついて何のメリットがある?」

ギーン
「既に琶月が犯人である可能性が限りなく低いと我々は断定している。奴の言葉を嘘だと愚直に考えるのは馬鹿がすることだ。」
ルイ
「では琶月さんの言葉を信じろ・・って事ですか?でも私もキューさん、その他皆さん大勢が食堂で大喧嘩している二人を見たじゃないですか。」
キュー
「うん・・・。まさか、食堂で大暴れしていた輝月、あるいは琶月の部屋に訪れた輝月のどっちかが偽物・・・みたいな事を言わなければいけないの?」

・・・私が知らない間にそんな事があったなんて・・・。
でも、私は確かに11時に師匠が部屋に尋ねてきた事を覚えている。あれは紛れもなく師匠だったはずだ。
だけど同じ時間帯に皆が食堂で喧嘩している師匠とヘルの姿を見ている。これだけの人がそう答えているのであれば全員がそろって嘘をついているとは到底考えにくい。
・・・これは、一体どういうことなの・・!?

熟考している私の顔を見てギーンが舌打ちをする。

ギーン
「馬鹿がっ、柔軟な発想の出来ないやつめ。もっと根本的な部分を見れないのか。キュー、貴様もだ。偽物だとか話を面倒な方へ持っていくな。」
キュー
「む、むかつくっ・・・!!」
キュピル
「琶月は既に犯人である可能性は限りなく低い。なら琶月がこの先の処刑から免れるためには犯人を割り出さなければいけない。つまり嘘をつくメリットはない
となれば、琶月の先程の発言がどうなれば正しい状況になるか。答えは簡単なはずだ。分るか?琶月。」

私の発言も正しくてみんなの発言も正しくなる答え・・・そんなのあるわけが・・・。

・・・・いや・・・ある・・・!!!

琶月
「・・・自分でも信じ難いんですけど・・・もしかして・・・
私てっきり午前11だと思っていたんですけど午後11・・・つまり23時だった・・・って事ですか?」
ガムナ
「な、なんだって!!?」
キュピル
「そうだ。そう考えれば話の全ての辻褄があう。
ルイ
「な、なるほど・・・!確かに、そう考えれば辻褄が合うようになりますね。」
ガムナ
「つか、14時間近くも爆睡していたってどういう事だよ・・・。紛らわしい。これからは超高校級のお寝坊さんって呼んでやるぜ。」
琶月
「あーあー!!故意でそんなに寝てた訳じゃないのに!!酷い酷い!!」
キュピル
「話を続けよう。午後11時に輝月は琶月の部屋に訪れた。その後どうなった?」
琶月
「あ・・・・、その後・・・師匠は私に話があるって言ってきたので部屋の中に入れたのですが・・・。
・・・・その・・・・・。」
ヘル
「んだよ、早く言いやがれ!」

・・・言い難い。だけど議論を進めるためには皆に話を続けなければいけない・・・。

琶月
「うぅ・・・ど、どういうわけか・・・。私が師匠に背中を向けた瞬間・・・突然・・・首元を叩かれて・・・それで・・・意識を・・・。」
キュー
「・・・・あれ?何で輝月は琶月を叩いて気を失わせる必要があったの?琶月は輝月の犬なんだから態々気を失わせなくても言えば何でも言う事聞きそうなのに。
ファン
「それについては私も同感です。」
ジェスター
「琶月は輝月の犬ー。」
琶月
「・・・・・・・・・・・・・。」
ジェスター
「あれ?反応ないね。わん、とか言うと思ったのに。」
ボロ
「ジェスターも少しは空気読んだ方がいいっすよ・・・。とうの輝月が殺されちまってるんすから・・・。」
テルミット
「キューさんが言った通り、どうして輝月さんは琶月さんの気を失わせるような事を・・・?こう言っては何ですが余程のお願い事でなければ
琶月さんは必ず引き受けたと思いますが・・・。」
キュピル
「つまり輝月は余程の事をしようとしていた。そう考えられるよな?」
ファン
「輝月さんは一体何をしようとしたのでしょうか?」

師匠が・・・私の気を失ってまで・・・しようとしたこと・・・・。
・・・・・。

私が考え続けているとキュピルがその答えを先に言った。

キュピル
「そうだな、例えば・・・殺人を犯そうとしたとかだな。
琶月
「・・・えっ!!?」

キュピルの発言に驚いたのは私だけでない。
ギーンを除くほぼ全員が驚きの表情を見せていた。

ヴィックス
「お、おいおい!ちょっと待てよ!今回の学級裁判は誰が死んだのが分っているのか!?
キュピル
「輝月が死んだから学級裁判が開かれている。そんな事は百も承知だ。だが輝月が実際に殺人を犯そうとしたかもしれない証拠を持っている。」
琶月
「・・・・ま、まさか・・・そんな・・・・・・。
・・・・し、信じられない・・・ですけど・・・確かに証拠を組み立てると一つの可能性が・・・・。」

きっと今の私は形容できない驚きと恐怖で顔を歪ませ醜い表情になっていただろう・・・。
でも、それだけ私はこの事実を信じられないでいた・・・。

キュピル
「琶月。辛いかもしれないがその証拠を組み立てて説明してみせろ。」
琶月
「師匠が・・・殺人を犯したかもしれない証拠。一つ目の証拠は師匠の手についていた金箔です・・・。」

 [言魂:輝月の指についた金箔]
 ->指に金色のキラキラしたものがついていた。恐らく金箔。

ジェスター
「何で金箔が手についている事が殺人を犯そうとした理由になるの?」
キュー
「えーっと・・・私も良く分らないんだけど・・・。確かあの金の模擬刀って素手で触ると金箔がはがれてついちゃうんだっけ・・・。」
琶月
「・・・そうです。師匠の指の腹や手の平には金箔の跡がついていました。・・・これは模擬刀を握った証明になります・・・。」
ジェスター
「何で?犯人が繰り出した模擬刀を手で受け止めた可能性は?」
琶月
「そんな事をすれば怪我をします!指の骨折だってありえます!」

ジェスター
「真剣白刃取りで受け止めたのかもしれないよ!!」
キュー
「ジェスターって反論ばっかりだけど妙に的を突いた反論をするよね・・・。」
ギーン
「白刃取りしたのであれば刀身の金箔はもっと剥がれているはずだ。金の模擬刀の刀身部分は殆ど金箔が剥がれていない。その可能性はないとみていいだろう。」
キュピル
「なら何故輝月の指の腹や手の平に金箔がついていたか?それは輝月自身が模擬刀を持っていた事を証明する。」

琶月
「普通、金箔が手にこびりつくような物を握ろうと思いますか・・?それも水の出ない夜時間に!
ルイ
「普通は触れようとは思いませんよね・・・。」
ヴィックス
「輝月が手に金箔がこびりつく事を知らなかった可能性とか・・・はどうだ?」
琶月
「いえ、師匠は金箔が剥がれて手につくことを知っています。なぜならこれを持ち帰ろうと私が素手で触ってビッシリくっついたのを師匠は見ていましたから。」
ヴィックス
「なら輝月は知っていて触ったと言うのか・・・。」
キュピル
「観賞用でもあり、金箔がこびりつく模擬刀を何故輝月はわざわざ手に持ったのか?答えは明白だ。」
琶月
「・・・誰かを・・・殺す・・・ために模擬刀を持った・・・?
キュー
「でも模擬刀で人は殺せないんじゃ・・・!」
ギーン
「鳥頭が。突きなら殺せるとさっき議論しただろ。」

キューがギーンを睨むがそれ以上の事はしなかった。

琶月
「恐ろしいことに、もし師匠が人を殺すために模擬刀を手にしたと考えると色んな事に辻褄が合うんです・・・!
23時・・・。師匠は私の部屋に訪れ・・・背中を向けた私の気を失わせました。何故なら、私の部屋に置いてある模擬刀を使って誰かを殺そうと考えたから・・・!!」
ディバン
「なる・・・ほどな・・・。最近の若い子は恐ろしいことを考えるな・・・。」
ギーン
「ふっ、琶月。お前の推理に俺が一つ付け足してやろう。」
琶月
「え?」
ギーン
「輝月は殺人を犯した後、お前に罪をなすりつけようとした。そう考えるともっと辻褄が合うぞ。」

ギーンが無表情で琶月を見下すように言い放った。
ただの無表情なのに、その圧倒的な威圧に琶月は思わず一歩後ろに引き下がった。

琶月
「・・・えっ!?そ、そんな!?」
ギーン
「自分のない胸に手を置いて考えてみろ。輝月に『観賞用にやはり模擬刀が欲しい』と言われたらお前は疑って貸さなかったか?
琶月
「一言余計です!・・・でも、確かに・・・そう言われたら私は何も考えずに師匠に模擬刀を貸していたかもしれません・・・・。」
ギーン
「貸してくれる可能性の高い模擬刀を何故、輝月は琶月の気を失わせて盗るような事をしたか?
理由は明白だ。お前の部屋で殺人を犯しその罪をお前に着せようとしたからだ。
琶月
「し、師匠はそんな事しません!!!」
ギーン
「ふん、態々背中から気を失わせてきた奴をまだ信用しているのか。」
琶月
「わ、私と師匠の信頼関係はそんなもんじゃ・・・!!」
ギーン
「お前の言う信頼関係とは他人を気絶させても良いように聞こえるな。」
琶月
「う、うぐぐぐぐ・・・・!」
キュピル
「・・・残念だけど琶月。ギーンの言っている事は正しいんだ。
輝月が琶月の部屋で殺人を犯し罪を着せようとした証拠がある。
琶月
「そ、そんな・・・そんなの嘘です!!!」
キュピル
「証拠はこれだ。」

そういうとキュピルは一枚のメモ用紙を皆に見せつけた。
メモ用紙は鉛筆の芯を何度も擦りつけ真っ黒な面となっていた。
ただ、ここからでは真っ黒に塗りつぶされた面しか見えなかった。多分隣に居てもマジマジと見ないと何が写っているのか良く分らないだろう。

ジェスター
「なにそれ?」
キュピル
「輝月の部屋にあったメモ用紙を鉛筆で擦って文字を浮かび上がらせたものだ。」
キュー
「あ、知っているよそれ!よく刑事ドラマとかでやってるね。ペンとかで字を書くと、筆圧によって一枚下のメモ用紙にも跡が残ってそれを鉛筆で擦ると浮かび上がるって奴!」
キュピル
「原始的かつ古典的な手法だけど、役に立つもんだな。」
ディバン
「内容には何が書いてあるんだ?」
キュピル
「読み上げよう。『貴方と私で話し合いたい事があります。午前1時、時間になったら私の部屋に来てください。鍵は開けてありますのでそのまま入ってください。
話し合いたい事はこの学園から出る事に関する事で、後は他二人来られる予定です。 琶月より』
琶月、お前はこのメッセージを書いた覚えはあるか?」
琶月
「・・・そんなの・・・ありません・・・・。」
キュピル
「だろうな。琶月でないとすればこれは輝月が書いた物だと考えるのが合理的だ。輝月が琶月の名を語った理由は
当然、呼び出し人を琶月の部屋に誘き寄せようとしたからだ。」

 言魂追加:輝月の書いた手紙
 ->手紙の内容には私が誰かを部屋に招きよせるような事が書かれていた。

ディバン
「なるほどな。呼び出された奴は1:00になったら琶月の部屋に行くという訳だ。」
キュピル
「だがそこで待ち構えていたのは琶月ではなく模擬刀を構えて立っていた輝月だった。
琶月
「・・・そんな・・・・。」
ボロ
「つ、つーか・・・そんなメモこっそり貰っても怪しくて行けないと思うんすけど・・・。」
キュピル
「なら・・・ルイ。」
ルイ
「はい?」
キュピル
「今のようなメッセージがファンから送られてきた物としたら信用して部屋に行ったか?」
ルイ
「うーん、そうですね。ファンさんは温厚なお方ですし、他の方も来られるとの内容が書いてありますから行ったかもしれませんね。」
キュピル
「なら逆にヘルやギーンから届いた物だったとしたらどうだ?」

ルイが少しの間を置き、そして

ルイ
「・・・大変申し上げにくいですが乱暴されるかもしれないとの考えが出て行かなかったかもしれません。たとえ他二人が来たとしても。」
ヘル
「お、おいおい・・・。」
キュー
「まぁ、ヘルはいかにも手出しが早そうな感じがするもんね・・・・。」
キュピル
「これが意図的なのか偶然なのか分らないが、琶月の名を語った手紙なら、その手紙が自分を殺すためにおびき寄せる手紙だと分っていたとしても
戦闘に自身のある奴なら簡単に返り討ちに出来ると考えて安心して行けただろう。」
ジェスター
「琶月弱そうだもんね。」
琶月
「じ、事実なのが悔しいですけど・・・・。」
ギーン
「輝月は琶月の気を失わせた後、部屋に置いてあったメモ用紙を使ってその手紙を書き、送り先の人物に渡したのだろうな。」
キュー
意義ありぃ!!直接手紙を渡したら差出人が琶月じゃなく輝月だってわかっちゃうじゃん!!」
ギーン
「馬鹿が。個室部屋のドアの下にメモ用紙を差し込ませれば書いた人物も渡した人物も輝月だとは分らずに済む。
その後ノックでもしてやれば気づかなかった何て事もなくなる。少しは考えろ。」
キュー
「ぐ、ぐぐぐぐ・・・・。」
キュピル
「とにかく、輝月はある特定の人物に向けて嘘の手紙を書き琶月の部屋に誘きよせようとした。・・・模擬刀を構えてな。」
ギーン
「だが、そこに何らかのハプニングがあった事は明白だ。何故ならその計画を仕組んだ輝月が無様に殺されているのだからな。」
キュー
「そんな・・・言い方って・・・。」
ギーン
「事実だろう?態々こんな計画をしたのにも関わらず殺されているのだ。間抜けな奴だ。」
琶月
「酷い・・・!」
キュピル
「今は議論を続ける事に集中するんだ。」
ファン
「そうです。言い争いをするだけ時間の無駄です。」
ヘル
「だが、俺にもわかったぞ!!その手紙を受け取ったやつが今回の犯人なんだな!?
俺達は犯人がどうやって琶月の部屋にある模擬刀で輝月を殺したか考えていたが答えは簡単だったって訳だ!
輝月の野郎が自ら犯人を招き入れ、そして返り討ちにあったって訳だ!!!」

ヘルの発言は的を得た発言であり、一瞬騒然とした。


ガムナ
「だ、誰なんだ!?一体誰がその手紙を受け取ったんだ!!?」
キュー
「こらぁ!名乗り出ろー!!」
ボロ
「名乗り出る訳ないだろう!!?」
ディバン
「ちっ、宛先の人物名さえ書いていればな・・・!」

キュピル
「・・・・頃合い・・か。」

突然キュピルが不気味な笑みを浮かべた。

ヘル
「な、何が頃合いなんだよ?」
キュピル
「・・・この証拠品を最初に出したら下手な言い訳で逃げられるかと思って出せなかった。だが、今なら逃げ道も塞がれた。これまでの推理でな。
俺はさっき嘘をついた!さっきの手紙にはしっかり宛先の人物の名が書かれていた。読み上げた時は『貴方』と言ったけどな。」
琶月
「!!!!???」

キュピルの予想外の告白に再び周囲は騒然となる。

ヘル
「何だと!?誰だ!!早く人を殺した奴を言え!!!俺がぶっ殺しt・・・」


ヘルが大きな声で叫んだがそれ以上に、私はもっと大きな声で叫んでいた。

琶月
「早くそいつの名を言って!!!私が!!私が殺してやる!!!!」


力の限り台に向けて拳を振り下ろし大きな音を立てる。

テルミット
「お、落ち着いて!!」
キュピル
「議論の序盤。何度も議論の矛先を変えようと反論していた奴がいたな。それが気が付けばずっと黙っている奴がいる。」

キュピルが勢いよくその人物に向けて指を指した。

キュピル
「・・・ヴィックス、お前の事だ!!」


一瞬にしてヴィックスへと視線が集まっていく。

ヴィックス
「・・・・・・・・は?」
ボロ
「た、隊長っすか!!?」
ガムナ
「隊長・・・!!は、反論あるなら言ってやれって!!!」
ヴィックス
あ、あるある!!あるって!!確かに俺その手紙で呼び出されたけど怪しくて行けなかったぞ!!い、いくら琶月だったとしても用心していけなかったぜ・・・。」
琶月
「嘘です!!ヴィックス・・・視聴覚室であのDVDを見た時・・!!凄い外に出たがっていたよね!?手紙には学園から出る事に関する話をしたいって書いてあります!!
視聴覚室であんなにも乱れていたヴィックスが、その手紙を見て行かなかった訳がない!!!
キュー
「そーだそーだ!!あんなに外に出たがっていた奴があの手紙を貰って行かない訳ない!!」
ジェスター
「ヴィックスが犯人だーー!!」
ボロ
「た、隊長・・は、反論・・。」
ヴィックス
「ア、アホ!俺は犯人じゃないって!!おれを犯人と決め付けたら間違った答えになって全員死んじまうぞ!!?
いいか!?仮に俺が輝月が待ち伏せしている琶月の部屋にいったとするぞ!?仮にだからな!!
扉を開けたらそこで模擬刀を構えた輝月が待っている!超高校級の刀剣使いである輝月が!!
いくら模擬刀でも俺が輝月とやりあって勝てる訳ねぇーって!・・・な、な?そうだろ?」
琶月
「自分の肩書も忘れたのですか!?あんたは超高校級の軍人だ。」
ギーン
「それも世界の傭兵も恐れるらしいな。こうして直接会ってみたらその噂も些か信憑性に欠ける気もするが、お前なら超高校級の刀剣使いでもある輝月と十分やりあえたんじゃないのか?」
ヴィックス
「ぐ、軍人は神じゃねぇんだぞ!?扉潜った瞬間に輝月が模擬刀持って待ち構えているんだろ!?その最初の不意の一撃は避けられねぇっつの!!
キュピル
「扉を開けた時、本当に輝月は模擬刀を構えて待っていたんだろうか?」
ヴィックス
「待ち構えていたってお前等が言っていたじゃねーか!!」


ヴィックス・・・私が追い詰めてやる・・・!!!





--議題-- 扉の前で待ち構えていた輝月


ヴィックス
「おめぇら忘れたとか・・・いわねぇよな!!?
輝月は、琶月の名を語った手紙を書いて・・・。
犯人を琶月の部屋に誘き寄せようとした!!」

それは・・・私も認めたくないけど・・・。
でも、確かに師匠は・・・私の名を語ってヴィックスを私の部屋に招きよせようとしていた・・・。
それは紛れもない事実なんだ・・・・。

キュピル
「それで、その後は?」
ヴィックス
「その手紙を読んだ犯人は・・・1時になったら琶月の部屋に行った。
だが扉を開けたら、そこには輝月が模擬刀を構えて待ち構えていた!!
どう考えたって避けられる訳がねぇだろうが!!!」


琶月
「それは違う!!」



ヴィックス
「何が違うってんだぁ!?」
琶月
「犯人は1時ピッタシに私の部屋に訪れてなんかいない!」

ヴィックス
「その証拠は何だ!!」
琶月
「証拠はモノクマファイルだよ!」

  [言魂:ザ・モノクマファイル1]
 ->事件状況について詳しく書かれている。

琶月
「モノクマファイルには、師匠の死亡時刻は推定午前1時40分と書いてある!
もし午前1時ちょうどに行ったとしたら一回の戦闘時間にしては長すぎる!!」
ファン
「あの狭い空間で40分は非現実的です。ましてや片方が武器を持っていない戦いとなれば猶更です。」
ルイ
「映画でも個人と個人の戦いが40分も続いた物って見たことありませんね・・・。」
ディバン
「なら戦闘時間が40分にも及んでいないとするなら、何故死亡時刻は午前1時40分になっているんだ?
琶月
「理由は簡単です。ヴィックスは遅れて私の部屋にやってきたんです!!恐らく偶然に!!」

ヴィックス
「その根拠は!!?」
琶月
「根拠はあの二人の証言です!!」

 [言魂:ボロとガムナの証言]
 ->ガムナとボロは昨日1時までボードゲームを行い、その後自分の部屋で寝たらしい。
 ->ヴィックスも参加していたらしいが動機が収録されているDVDで神経がすり減り疲れてしまったのか10時で眠ってしまったらしい。

琶月
「ヴィックス、あんたは10時の時刻に眠ったようだけど、それは1時の話し合いに備えて仮眠をとったから途中で離脱して仮眠を取ったんだね・・・!?」
ヴィックス
「仮眠じゃねぇ!!俺は疲れてそのまま朝まで寝ていた!!根拠としては弱すぎるぞ!!」

琶月
「いいや!そんなことない!!」
ファン
「二人とも少し落ち着いてください。議論をストップさせないためにヴィックスさんが犯人だと仮定しましょう。もし違うのであればみなさんの質問を反論してください。いいですか?」
ヴィックス
「あぁ!!いいだろう!」

琶月
「ヴィックスは午前1時の話し合いに備えて仮眠をとった・・・。だけど少し眠りすぎてしまった。
午前1時を過ぎてもヴィックスは現れなかった。そして25分ぐらいになってもヴィックスは現れず師匠は失敗したと思って油断した。
一方、ヴィックス。あんたが起きた時、1時をとうに過ぎていて大体1時25分前後を針が指していてびっくりしたはずだ。
あんたは・・・慌てて起き上がって私の部屋に入り込んだ!だけど扉の先には模擬刀を下して油断していた師匠の姿があった・・・!
師匠は慌てて刀を構えて突きを繰り出すけど、遅れたうえに不意に入ってきたから避けられる時間を作ってしまい、ヴィックスは避けたんだ!!」
ヴィックス
「あぁ、面白い作り話だな!!輝月の突きを外した証拠でもあんのか!!?」

琶月
「証拠はこれです!!!」

 [言魂:ドアに出来た小さな窪み]
 ->窪みにキラキラ光る物がついている。

琶月
「私の部屋に面している方の扉に模擬刀の先と同じぐらいの小さな窪みがあったんです!しかも、窪みにはキラキラ光る物もついていた!これは間違いなく模擬刀から剥がれた金箔です!!」
ディバン
「そんな傷・・・よく見つけたな。」
キュー
「あ、それなら私も見た!」
キュピル
「その傷なら俺も確かに見つけた。あのキラキラ光る者は金箔とみて間違いないはずだ。どのような理由であれ、部屋に入ってきたヴィックスを輝月は仕留めることが出来なかった。」
ディバン
「ドアにその窪みが出来ていたって事はドアを閉める時間すら作ってしまったってことだな。」
ギーン
「突きを外した後は悲惨だぞ?その結果がどうなったかは言うまでもないだろう。輝月は死んだ。
キュー
「多分模擬刀が・・・軽く扉に突き刺さっちゃって・・・抜くのに時間がかかったんだよね・・・。その間にヴィックスに模擬刀を奪われて・・・。」
ヴィックス
「俺を勝手に犯人にするな!!!

つーか、輝月は俺が遅れて入ってきたから油断して外したとか言っているけどな!!慌てて琶月の部屋に走って行ったら足音が聞こえてすぐに模擬刀を構えなおすんじゃねーのか!!?」

琶月
「それもあり得ない!!」

ヴィックス
「何でだよ!!証拠出してみろや!!」

琶月
「証拠はこれです!!」

 [言魂:防音の施された部屋]
 ->私の部屋に限らず、全員の部屋は防音が施されているらしい。

琶月
「私の部屋に限らず、全員の部屋には防音が施された部屋だそうです!
足音は聞こえる訳ありません!!」

ヴィックス
「ぐっ・・く、くそが・・!!」

琶月
「ヴィックス、あんたは最初の一撃を避けた後、一瞬怯んだ師匠に反撃して模擬刀を奪い取った!!」
キュピル
「そしてそれを模擬刀だとは知らずに刀を振りまくり壁の部屋に傷をつけた。」
ギーン
「だがついに攻撃が輝月の肩に直撃したその時、それが模擬刀である事に気が付いた。
だが攻撃がまともに肩に入ったんだ。輝月の体勢はよろけただろうな。その後心臓にむけて突きを繰り出す猶予はあったはずだ。軍人のお前ならな。」
ヴィックス
「ば、ば、馬鹿・・・言ってんじゃ・・ねぇよ!!へ、部屋には琶月が寝てたんだろ!?普通音で起きるだろ!?そんな激しい戦闘はなかった!」

ファン
「睡眠と失神は根本的な部分から違います。失神は大脳皮質全体あるいは脳幹の血流が瞬間的に遮断されることによっておこる意識消失発作です。
揺すったり大きな声で呼ばれたりするぐらいでは起きません。むしろ危険なのでもし気絶した人を見かけても揺すったり呼びかけたりしないでください
ヴィックス
「だ、だとしても、仮に俺が犯人だとしたら琶月もついでに殺しちまうかも・・な・・・。ハ、ハハハハハ。」
キュピル
「いいや、違うな。そんなことしても証拠が増えるだけだ。お前は失神している琶月に罪を着せようとして自分が殺したことを隠そうとしたはずだ。
現に琶月は生きているし、罪を着せられた証拠が確かに残っていたからな。」
ギーン
「さぁ、どうする?ヴィックス。お前が犯人である理由が次々と出てきたぞ?」
ガムナ
「た、隊長・・・は、反論・・まだ反論できるよな・・・!!?」
ヴィックス
「・・・反論?・・ああぁ!!あるに決まってるだろぉが!こんのアホンダラ!!!
つーか、お前等がずっと言ってきた事はただの
状況証拠じゃねぇか!!俺が犯人だと決めつけるような証拠は何一つ出てねぇーぞ!!」
琶月
「いいや!!これまでの議論からあんたが犯人である事はもう明白だ!!!
ヴィックス・・・あ、あんたが・・・師匠を・・・!!!」
ヴィックス
「アホアホアホアホアホアホ!!!俺はやってねーっつの!!!
どこにも俺が輝月を殺したっていう証拠が出てなかったじゃねーか!アホ!ドアホ!!」


琶月
「私にはもうわかっている・・・!!証拠はまだ確かに出ていない。だけど次の議論であんたの手詰まりにしてみせる!」






-議題-  ヴィックスが残した証拠


ヴィックス
「手詰まりにしてみせるだぁ!!?やってみやがれってんだ!!
俺が犯人である証拠は誰か持ってるのか!!?」
キュー
「っ・・・・。」
ルイ
「・・・・・・・・・・。」
ヘル
「ちっ・・・・!!」

ギーン
「キュピル、持ってるか?」
キュピル
「いや、ない。」
ヴィックス
「はっ!!なら今の話は全部デマカセって事になるな!!結局お前等は状況証拠だけで話してたんだっつの!!
結局俺が犯人に結び付くような事は何一つ話していない!
死体の状況も!
模擬刀も!
部屋の荒れも!!
琶月の
服についた血も!!
全部、俺に証拠が結びつく話はねぇじゃねぇか!!!」


琶月
「それは違う!!!」

ヴィックス
「アホアホアホアホアホアホアホ!!!」

 言魂記憶->服についた血

琶月
「ヴィックスっ・・!・・・あんたは模擬刀で師匠を・・・殺めた・・・!!だから自分が犯人だと分らないように沢山の証拠をねつ造した・・!
だけど、絶対にねつ造出来ない証拠が一つだけある!!!
師匠を模擬刀で刺した時、必ず血飛沫が飛んで自分の服についたはずだ!!!その血のついた服をどう処分するか悩んだ!!」
ヴィックス
「アホアホアホアホアホアホ!!!」

キュピル
「そうだろうな。ゴミ処理場の入り口はシャッターが下りていて入れない。その鍵はファンが持っていてその時間帯はぐっすり寝ているはずだ。
まさか深夜にゴミを燃やしたいから態々起こしたら疑われるな。」
ヴィックス
「アホアホアホアホアホアホ!!!」

ギーン
「夜時間だから水で血の付いた服を洗い流すことも出来なかっただろうな。朝になる頃には血は乾燥して猶更不可能だ。」
ヴィックス
「アホアホアホアホアホアホ!!!」

琶月
「結局、あんたは血のついた服は自分の部屋に隠すことしか出来なかったはずだ・・・!!
ヴィックス、あんたが持ってる服を全部見せろ!!!」
ヴィックス
「アホアホア・・・・あ・・・・?」

ファン
「ちなみに、この四日間。ヴィックスさんが着ていた服は全て覚えていますよ。服の種類が減っていたらちゃんと指摘してあげます。」
ギーン
「もし捨てたのであれば、いつ、どのような理由で捨てたのか、そしてファンにゴミを捨ててもらうよう頼んだ事を証明する証言を出してもらおう。」
キュピル
「釘を刺しておくが『失くした』はなしだぞ。」





「・・・・あぽ?」









           ==クライマックス推理==



Act,1

全ての始まりは私が昼寝をしていた間に起きていた。
私は、モノクマに用意されたDVDを見て疲れてしまって昼寝をしてしまい、14時間も超える長い昼寝をしていた。
その昼寝をしている間のどこかの時間。師匠は、自分の部屋である手紙を書いていた。

それは、私に成りすました手紙。
午前1時になったら私の部屋へ来させる物だった。
師匠はその手紙を書くと、犯人のドアの隙間から手紙を部屋の中へ飛ばした。
その手紙を受け取り内容を読んだ犯人は、その後何が待ち受けているかもしれずに行くことを決めてしまう・・・。


Act,2

午後11時。
数回のインターホンが鳴り響いた後、私は起きあがり、扉を開けるとそこには師匠が立っていた。
私は師匠を部屋に招き入れ背中を見せた瞬間。突然師匠に首元を叩かれて気を失ってしまった!

私の部屋に入り込んだ師匠は、さっそく獲物を私の部屋に招き入れるための準備を始めた。
扉の前で倒れている私を邪魔にならないように恐らくベッドの上に運び・・・
そして棚の上に置いていた模擬刀を手にした。
この模擬刀は金箔が剥がれやすく、師匠の指についていた金箔はこれを手に持った事によってできたものだった。

そして、その模擬刀を手にした師匠は午前1時にやってくる犯人を殺すために
扉の前で模擬刀を構えて待ち続けた・・・・。


Act,3

午後1時。ここで師匠にある誤算が生じたんだ。
手紙を受け取った犯人は、幸運な事にまだ寝ていて時間ぴったりに私の部屋に来ることはなかった。
師匠は、ここで作戦が失敗に終わったと勘違いしてしまった・・・。

それから数十分が経過したその時。犯人は目を覚ました。
時刻がとうに1時を過ぎていて、犯人は慌てて私の部屋に入り込んだ。
ところが、部屋の中には模擬刀を手に持った師匠の姿があった!

てっきり失敗したものだと思っていた師匠は慌てて模擬刀を構えなおし、勢いよく突きを放った!
いくら不意に入ってきたとはいっても、超高校級の刀剣使いである師匠なら普通の人なら簡単に殺せる。
だけど、犯人は普通の人ではなかった。なぜなら、犯人は超高校級の軍人で戦闘面で重要になる判断力と反射神経は十分に身についていたんだ。
犯人は突きを回避し、模擬刀は私の部屋に面しているドアにぶつかった。あの扉に出来ていた窪みと金箔はこの時についたんだ。


Act,4

渾身の突きを外した師匠に待ち受けていた運命は過酷な物だった。
次の一手を繰り出す前に、犯人が師匠から模擬刀を奪い取る反撃し始めた!
それを刀だと勘違いした犯人は何度も模擬刀を振るい部屋のあちこちで壁に斬撃のような傷をつけていった。
そして、ついにその一打が師匠の肩を強く叩いた!
肩を斬ったのではなく、叩いた事に気づいた犯人はここで自分が持っている物が模擬刀である事に気が付いた。

肩を強打された師匠は避ける体力を残していなく・・・師匠は、犯人の繰り出した突きによって・・・命を落としてしまった・・・。


Act,5

師匠を殺した犯人は、この犯行を私が行ったものにしようと偽装工作を始めた。
まず、師匠の傷口から溢れ出る血を両手で掬い取ると、それを寝ている私の胸へこぼした。
こうして、あたかも私が師匠を殺したかのようにみせかけたんだ。
私に師匠の血をかけた後は、そのまま自分の部屋へと戻って行った。

次に、自分が犯行にかかわった証拠を消そうとした。
まず自分の服についた血を洗い流そうとしたけど、水が出る事はなかった。
何故なら、午後10時から午前7時までの夜時間の間は断水しているからだ。
ゴミ処理場で処分しようにも、シャッターを開けられるのは鍵を持っている掃除当番だけ。
その掃除当番はファンが持っていて、深夜に起こすことも出来ず部屋に隠すことしかできなかった。
これは推測だけど、手についた血や金箔は多分トイレに貯まった水で洗ったんだと思う。


そして午前6時。
部屋の隅でぐったりと倒れている師匠の姿を見た私は居てもたってもいられなくなり大きな声で叫んだ!
私の叫び声を聞いて、キュピルが慌てて部屋の中に入り込み、部屋の隅で死んでしまっている師匠の姿を見た後は
全員の扉を激しく叩いて叩き起こし、みんなを部屋へ集めた。

その時、何食わぬ顔で普通に現れた犯人こごが・・・


ヴィックスだったんだ・・・・。








・・・・・。

・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

ギーン
「どうやら、反論はないようだな、」
琶月
「ヴィックス・・・。」
モノクマ
「うぷぷぷ議論は終わった感じかな?それじゃ、そろそろお待ちかねの、投票ターイムに移りましょうか!」
ヴィックス
「・・・は・・?」
モノクマ
「おまえら、お手元のスイッチで投票してくださーい。投票の結果、クロとなるのは誰か。その答えは!!」




黒と選ばれた人物が誰になったか。

そんなの、言うまでもなかった。



モノクマ
ヒャッホー!!大正解!!
今回輝月を殺したのはヴィックスでしたー!!」

ヴィックス
「は・・い・・?」

ルイ
「ヴぃ、ヴぃっくす・・・さん・・・。」
ヘル
「てめぇ!!どうしてこんな事をしやがった!!」
ヴィックス
「仕方・・・ねぇだろ・・・。だって・・・俺だって殺されそうになったんだぞ・・・。だから・・・だから・・殺すしかなかったっつか・・・。
おお、お前らだって!!一歩間違ってたらこうなってたんだぞ!!!」

ヴィックスはそう叫ぶとその場で崩れ落ち床の上で号泣し始めた。
誰もが居た堪れない気持ちになり、全員がヴィックスから目を逸らした。

・・・一歩間違っていたらこうなっていた・・・。


この言葉がどれほど重たい言葉か。


私達は改めて知ることになった。


今までは・・・誰かを殺す、殺さないだけの問題だったけど・・・。今はもう違う。


殺される可能性を強く意識しなければいけなくなったんだ・・・。





モノクマ
「はい、ってなわけで。オマエラは見事黒を突き止めましたので、ヴィックスのおしおきをおこないまーす。」

ヴィックスが我に返ったかのように顔を上げ、すぐに立ち上がった。

ヴィックス
「ちょ、ちょっとまってくれよ!!俺は仕方なく殺しただけなんだって!!そ、そうだ。これ正当防衛じゃね・・!?な!?そうだろ!!?」
キュピル
「本気で言っているのか?
何度も殺害を止めるタイミングは合ったはずだ。」

キュピルがピシャリと言い放つとヴィックスの顔はひきつった顔に変わった。

ギーン
「模擬刀を奪い取った瞬間に、肩を強打して輝月の体勢を崩した時。少なくとも、二回は止めるタイミングはあったな。
それで正当防衛を主張するとは片腹痛い。」
モノクマ
「うぷぷ、それじゃさっさとオシオキ始めちゃおうっか~。みんな待っているしね~。」
ヴィックス
「ちょ、ちょっと・・・ま、待ってくれよ!!!!」


モノクマ
言い訳無用!!秩序を乱したら罰を受ける!それが社会のルールでしょ?」

ヴィックス
「い・・いやだ・・や、やめてくれ・・・!!」

モノクマ
「超高校級の軍人であるヴィックスのために、スペシャルなおしおきを用意しましたー!!!」

ヴィックス
「や、やめてくれぇっ!!!お、俺をここから出せ!!!出してくれ!!!!」



ヴィックスがその場から離れエレベーターがあった場所へと走り出す。
だが、そこはいつのまにかただの壁となっていた。ヴィックスはここから逃げ出すことは叶わない。

モノクマ
「それじゃ張り切って行きましょう!!おっしおっきターーーーイム!!!!!!!

ヴィックス
「イヤダアアアアアアアアアアアァァァァァァァァッッッッッーーーーーーーーーー!!!!!」



モノクマが目の前に召喚されたスイッチを木槌で叩くと、部屋の電気が消え、音も全てがなくなった。













次に明りがついた時。

私達は裁判場にはいなかった。

そこは広い広い地下の一室。

部屋の隅すら見えない。少なくとも部屋の一辺は5Km以上もある、凄まじく広い部屋。
その広い部屋で観兵式が行われていた。数千、数万もの銃器を持った機械歩兵が一糸乱れずな動きで行軍を続けていた。
機械歩兵の軍隊がある一定の所まで進むと、そこで足を止め回れ右をする。

機械歩兵たちの視線の先には、柱に縛り付けられたヴィックスの姿があった。


ヴィックスへのおしおき。その名も





                   「coup d'État」
                    (クーデター)





機械歩兵たちが一斉に銃器を構える。
その後ろで革命の旗を振り回すモノクマの姿。
モノクマが旗を振り下ろした瞬間、裁きの鉄槌が下された。
無数の弾丸がヴィックスの身体を貫き、身体を、肉を、骨を吹き飛ばしていく。

鳴り止まない銃声。

留まる事のない銃声。

耳を劈く悲鳴も、すぐに聞こえなくなった。



そして、後に残されたのは肉の破片。それだけだった。






イキノコリ: 残り 12人



続く


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